お問い合わせをいただいたので、このページで書きます。
(何年もたった今もこの論文について聞かれるのは嬉しかったし、お力になりたいと思いました! 少し気になったのですが、どのような背景やテーマでこの論文にご興味を持たれたのでしょうか? 私自身も、興味を持っていただけた理由を知ると嬉しいです!)
こちらに、私が学部生時代にゼミのメンバーと共同で書いた論文の要旨が掲載されています。
大阪大学経済学部の懸賞論文の、最優秀賞を受けました。
ゼミはゲーム理論をテーマとしており、奢侈財やナッシュ均衡について話していました。
論文が議論された流れを説明します。
最初に、懸賞論文のテーマ決めをゼミメンバーが考えて持ち寄りました。
そのアイデアの報告の資料を掲載します。(私が作ったものなのでお見せできます)
ーーー
テーマ:パリ協定
プレイヤー:署名国195カ国 批准国55カ国超
利得:地球温暖化の防止による便益から削減コストを引いたもの
戦略:排出CO2の削減量
参考資料1
トランプ氏、パリ協定離脱を正式表明「米国に不利益」:日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGN01H1V_R00C17A6000000/
(以下引用)
【ワシントン=川合智之】トランプ米大統領は1日、ホワイトハウスで声明を読み上げ、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱すると発表した。パリ協定は「非常に不公平だ」として「米国に不利益をもたらし、他国の利益となる」などと非難し、公約実現を正当化した。195カ国が署名した同協定から、世界第2位の二酸化炭素(CO2)排出国である米国が抜ければ、地球的課題の温暖化対策には大きな打撃となる。
トランプ氏は「(温暖化ガス削減の)国別目標の履行や、緑の気候基金(への拠出)を中止する」と表明した。オバマ前政権は温暖化ガスを「2025年までに05年比で26~28%削減する」との国別目標を表明し、途上国の温暖化対策を支援する緑の気候基金に30億ドル(約3300億円)の拠出を約束したが、いずれも白紙に戻した。
温暖化対策は世界全体が直面する共通課題として、日米欧などが1990年代から途上国を交えて時間をかけて合意をつくり上げてきた。現在のパリ協定は一律に削減目標を定めるのでなく、各国が目標設定と削減実行を継続的に進める仕組みだ。世界最大の経済大国である米国が「自国第一」を理由に同協定から抜ければ、排出削減の取り組みだけでなく世界的な政策協調の枠組みにも影を落とす恐れがある。
参考資料2
気候変動国際交渉プロセスのゲーム理論的考察(社会技術研究論文集 Vol.9, 41-49, May 2012)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sociotechnica/9/0/9_41/_pdf
(以下引用)
温室効果ガスの削減はどこの国が行おうとも,その便益はあまねく世界全体が裨益する.したがって,各国とも自国の負担をできるだけ少なくし,他国が多く削減する形を望む.すなわち,気候変動問題はただ乗りのインセンティブがある公共財ゲームであると言える.このような状況下でどのようにすれば,社会的に最適な排出水準が達成可能かについてゲーム理論を用いた分析が行われている.
以上のような背景を受けて,本論文では,1)気候変動の国際交渉において,大幅な削減合意を阻害している要因をゲーム理論のモデルと現実の国際交渉の実態の分析により明らかにし,2)気候変動国際交渉において大幅な削減目標合意を導くアプローチを検討することを目的とする.
(中略)
削減量はc/bとすることが,他国の戦略に関わらず,当該国の支配戦略となり,社会的に最適な排出量(c/Nb)は達成されない.
(引用終了)
以下、囚人のジレンマに陥らず自ら積極的に削減を進めようとするEUのリーダーシップの存在,各国の交渉ポジションに対する国内政治の影響、先進国と途上国間の衡平性の考慮といった点でBarrettらのモデルが現実の交渉を反映していないこと,また大幅削減合意に導くためには各国の温室効果ガス削減対策の便益の認識が重要であることを指摘し、条件付戦略や2レベルゲームの活用を示唆している。
ーーー
実を言うと、この資料の内容で議論は半分終了しています。
私たちの懸賞論文は参考資料2の数式モデルを下敷きにし、パリ協定にあわせて改変したものを、過去の枠組みであるカンクン合意のモデルと比較し、有効性を検証しています。
お問い合わせをくださった方の聞きたいこととずれていたらごめんなさい。けっこう前のことなので記憶があんまりなくて、この論文について書けることの1%ぐらいしかお伝えできていません。
当時のファイルは残っているので、またご質問があれば調べて解答できます! ただ、数式の計算は私ではなく上回生がやってくれたので、私では理解不足です。。すみません。
お問い合わせありがとうございました。
追記:書いてから気づいたのですが、URLにあるのは要旨でしたね。実際の論文には数式がありました。これってどこかに掲載されているのでしょうか・・・
コメント欄